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石川啄木来釧57日目~燃えるようなバラ一輪~ [啄木日誌]

啄木は昨日から腹痛だの、何も面白い事がないだの、不快だのと言って会社を二日続けて休みます。
意外なことに啄木はこれまで会社を休んだことはありませんでした。
この日、与謝野鉄幹氏の手紙と「明星」が届き、浪漫主義の文学から現実的な自然主義文学へと進歩していると書いてあり、
この手紙はさらに文学への道と啄木を呼び起こさせるものだったかもしれません。

そして、またこの日、梅川が小さな花瓶に赤いリボンを結わえて、燃えるような造花のバラ一輪を差して啄木を訪ねます。
このことは短歌に認めていますが、本ではなく別ペンネームで釧路新聞に発表しています。
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Caplio GX100
一輪の赤き薔薇の花を見て 火の息すなる 唇をこそ思へ
歌留多会が縁となった本行寺(歌留多寺)の隣に歌碑は立てられています。
この「赤き薔薇」には後日談があり、それは小奴が絡んでの一騒動と発展します。

啄木は今日も夜の浜へと足を運びます。
汐が引いていて、砂が凍っている。海はやはり静かだ。月は明るい。凍れる砂の上を歩いて知人岬の下の方まで行くと、千鳥が啼いた。生まれて初めて千鳥を聞いた。千鳥!千鳥!月影が鳴くのか、千鳥の声が照るのか!頻りに鳴く。彼方でも此方でも鳴く。凍れる砂の上に三人の影法師は黒かった。
なんて詩的で素敵なんでしょう。このところの啄木の日記はすっかり文学的になっています。
このときの情景を詠んだのが「しらしらと氷かがやき 千鳥なく 釧路の海の冬の月かな」という有名な歌です。
ただし、千鳥が釧路に来るのは4月から5月で千鳥ではないという指摘もありますが、同時期、他の歌人も千鳥の歌を詠んでいることがわかり「千鳥はこの時期確かにいた」という説を言う方もいるそうです。
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コメント 2

keykun

こんばんは。^^
日記に記載された事柄の真偽を問うのもどうかと思います。
凍てつく砂上のビスケットの結社が共に千鳥を訊いたという事だけで、
千鳥が三人に呼応してきます。^^;
素敵な話です。況して文学としての普遍性をも。^^
沸き立つ創作への息吹きが啄木をして駆り立てたのでしょうね。
何処までも堅持欲が強いのかも? ^^

by keykun (2008-03-18 00:40) 

mamitan

研究家の方々があれこれと唱えてくださいますが、
日記こそ自分中心のものはありませんしね^^
啄木は小説家として開花できませんでしたが、
この日記は文学として成り立っているからこそ今でも
語られるのかもしれません。
by mamitan (2008-03-18 12:23) 

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